画像データ管理および解析システムのデプロイメント パターンの選択

画像データ管理および解析システムは通常、次の 4 つのデプロイメント パターンのいずれかを使用してデプロイされます。

デプロイメント パターンの選択は、組織の GIS システムを設計する際の最も重要な決定事項の 1 つです。

この決定で最も重要な要素は、さまざまなデプロイメント アプローチをサポートするにあたって、組織の IT 方針、ガイドライン、および許容度と一致させることです。 たとえば、SaaS ベースのシステムとソリューションで標準化することを好む組織もあります。 また、Kubernetes の運用経験とスキルを持つスタッフの採用やトレーニングなど、Kubernetes ベースのデプロイメントに多額の投資を行っている組織は、おそらく Kubernetes ベースのデプロイメント パターンを好みます。

注意:

機能と検討事項は、デプロイメント パターンによって異なります。 詳細については、以下の比較とデプロイメント パターンのページを確認してください。

これらのデプロイメント アプローチに関する一般的な情報と考慮事項については、ArcGIS の概要の「ArcGIS 製品とデプロイメント オプション」ページをご参照ください。

機能の比較

IT 方針、ガイドライン、および許容度に一致させるだけでなく、意思決定プロセスにおいて各デプロイメント パターンの機能を考慮することも重要です。 画像データ管理および解析システムの機能は、デプロイメント パターンによって異なります。 次の表は、各デプロイメント パターンでサポートされている特定の機能を比較したものです。

画像データ管理および解析システムで使用される機能のうち、通常は他のシステムによって提供される機能 (ベースマップ、ジオコーディング、位置情報サービス システムによって提供されるその他の位置情報サービスなど) は、以下に示されていません。

機能 SaaS SaaS - Image Dedicated Windows/Linux Kubernetes
画像の視覚化と解析
データ モデリングと構造化
画像データの公開 1 1
カタログ データセットとレイヤー2    
タイル イメージ レイヤーのホスト2    
リアルタイム ラスター解析
標高解析
分散ラスター解析
画像抽出
ディープラーニングと AI 3 3 3 3
多次元データ
画像空間での作業 4 4 4
ステレオ画像の操作
方向付き画像
ドローン運用
リアリティー マッピング
ビデオ5      
LIDAR データセットとワークフロー
合成開口レーダー
STAC カタログへのアクセス6

フルサポート 一部サポート

  1. ArcGIS Online システムは、さまざまな画像データ形式をサポートできますが、ArcGIS Enterprise ベースのシステムほどは多くのタイプ、センサー、製品をサポートできない場合があります。  2

  2. タイル イメージ レイヤーは、ArcGIS Online の特定の CRF ベースのタイル レイヤーを指します。詳細については、タイル イメージ レイヤーをご参照ください。  2

  3. ArcGIS Deep Learning Studio は、現時点では ArcGIS Enterprise on Windows/Linux、または ArcGIS Enterprise on Kubernetes でのみ使用できる Web アプリケーションです。  2 3 4

  4. ArcGIS Excalibur は、ArcGIS Online と ArcGIS Enterprise の両方で利用できる Web アプリケーションです。 Excalibur は、画像空間での画像処理やビデオ解析のための主要なアプリケーションの 1 つですが、現時点では ArcGIS Video Server を使用して ArcGIS Enterprise でのみ使用できます。 画像空間とビデオ アセットは、ArcGIS Pro でも視覚化して活用できます。  2 3

  5. ビデオ ファイルのカタログ化とストリーミングは現在、Windows または Linux 上のフェデレーション サーバー ロールの ArcGIS Video Server でしか実行できません。 ArcGIS Pro と ArcGIS Excalibur はどちらも、ネットワーク、クラウド、Web ストレージに格納されたフル モーション ビデオまたはビデオ サーバーを介してストリーミングされたフル モーション ビデオをサポートしています。 

  6. ArcGIS Pro では、外部 STAC カタログに接続するために STAC (Spatio-Temporal Asset Catalog) サポートを使用できます。現時点で、STAC カタログまたはコレクションのホストをサポートしている画像データ管理および解析システム パターンのデプロイメント パターンはありませんが、ArcGIS GeoPortal Server を使用して STAC カタログをホストすることができます。 

上記の各行の詳細については、画像データ管理システムの機能をご参照ください。 また、上記の各セルについては、画像データ管理および解析システムのデプロイメント パターンのページに詳しく記載されています。

上記の機能は、2025 年 7 月時点で利用可能な機能を反映しています。

一般的な検討事項

以下の検討事項は、組織のビジネスと IT のニーズを適切な画像データ管理および解析システムのデプロイメント パターンに合わせることを目的としています。 ここに示す情報は、すべてを網羅するものではなく、このシステム パターンの設計と実装における主要な検討事項に焦点を当てています。

  • スケーラビリティー、信頼性、SLA (サービス レベル アグリーメント)、セキュリティー、組織と Esri 間の責任のバランスは、デプロイメント パターンの選択における主要な要因になる傾向があります。 詳細については、信頼性パフォーマンスとスケーラビリティー、およびセキュリティーの柱をご参照ください。
  • ArcGIS Online と ArcGIS Image または ArcGIS Image Dedicated を組み合わせて使用した SaaS デプロイメント パターンは、市場投入までの時間が最も短くて済みます。 これによって提供される機能は組織ですぐに使用可能であり、そこに含まれているさまざまなアプリケーションは、幅広いワークフローとユーザー ニーズに対応しています。
  • ArcGIS Image for ArcGIS Online は、ベンダーから提供されたデータセットやデータ プロバイダーからダウンロードしたデータセットなど、比較的単純な画像アセットまたは静的な画像アセットを取り扱っている組織に適した選択肢です。 タイル イメージ レイヤーによる時間対応のサポートもありますが、ArcGIS Image データセットは通常、自己完結型であるため、他のワークフローで必要となることがある複雑な検索式やモザイク処理は必要ありません。
  • ArcGIS Image Dedicated は、より高度な画像データ管理および解析システム向けに設計されており、ArcGIS Image との主な違いの 1 つは、ArcGIS Image Dedicated が画像データのソースとして AWS または Azure の顧客管理オブジェクト ストレージの使用をサポートしていることです。 製品ドキュメントワークフローの例を参照して、ストレージ プロバイダーとの互換性、クラウド ホスティング戦略、実装の詳細を確認してください。
  • ArcGIS Enterprise on Windows、Linux、または Kubernetes で構築された画像データ管理および解析システムは、さまざまなクラウド環境のオブジェクト ストレージへの接続だけでなく、オンプレミスのオブジェクト ストレージやブロック ストレージ プロバイダーへの接続もサポートしています。
  • GPU (グラフィックス処理装置) へのアクセスは、クライアント アプリケーションとサーバーまたはバックエンド システムの両方の観点から、画像データ管理および解析システムの重要な要件になることがよくあります。
    • 推論やトレーニングなどのディープ ラーニング ワークフローは、特定の計算リソース (GPU プロセッサーなど) に大きく依存しています。 Esri では、ディープ ラーニングにおける GPU の可用性と適合性に関する一般的な質問に答えるディープ ラーニング FAQ を用意しています。
    • ArcGIS Pro を使用して仮想マシン上で画像を表示するなど、一部の解析ワークフローやレンダリング プロセスは、GPU または仮想 GPU を利用して、このエクスペリエンスを高速化している一方で、ジオプロセシング ツールや Python Notebook などの他のワークフローは、GPU をネイティブの解析計算に利用しています。 詳細については、ArcGIS Pro ドキュメントの「Spatial Analyst での GPU 処理」をご参照ください。
    • GPU リソースの可用性と使用率は、デプロイ パターンによって大きく異なる場合があり、システムをホストするのにかかるコストにも多大な影響を与える可能性があります。 ArcGIS Enterprise on Kubernetes の具体的なガイダンスは、関連ドキュメントをご参照ください。
    • ArcGIS Notebook Server と ArcGIS Online Notebook では、特別に定義されたノートブック ランタイムを使用してユーザーが GPU リソースにアクセスできるようになり、Python ノートブックのデータ サイエンスと機械学習のワークフローが容易になります。
    • GPU へのアクセスは一般的な要件ではありません。多くのジオプロセシング ツールや解析ワークフローは GPU を使用するように設計されていません。 このため、ワークフローの改善を期待するのではなく、必要かつ影響が大きい場合にのみ GPU リソースをプロビジョニングすることが重要です。

デプロイメント パターンの選択は、組織の GIS システムを設計する際の最も重要な決定事項の 1 つです。 しかし、決定事項はそれだけではありません。 システムの設計には、セキュリティー、信頼性、統合など、検討すべき要素が多数あります。 そのため、ここに記載されている情報がすべてとは考えないでください。 ArcGIS Well-Architected Framework のアーキテクチャーの実践および製品ドキュメントを設計プロセスの一部として詳細に確認してください。

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