ArcGIS システム パターン

ArcGIS システム パターンは、ArcGIS で構築されるシステムの一般的なタイプです。 これらのシステム パターンは地理空間的な性質を持ち、複数のデプロイメント モデルをサポートしているため、1 つの業界や市場セグメントに特化したものではありません。

システムとは

システムとは、ワークフローをサポートするために連携して動作するように構成および構築されている一連の機能、製品、手順です。 システムは通常、組織に提供する機能、定義およびサポートされているワークフロー、より具体的な機能要件と非機能要件によって決まります。

ArcGIS システム パターンとは

ArcGIS システム パターンは、実際のシステムを抽象化したものであり、組織が ArcGIS ソフトウェアおよびサービスを使用して実装する最も一般的なタイプの地理空間システムを表します。 システム パターンは通常、複数の業界や市場にまたがって見られます。 システム パターンの目標は、IT システムと GIS システムを設計および構築するユーザーが、ArcGIS の機能と製品を、組織が設計、デプロイ、運用するシステムに組み込む最も一般的な方法を理解できるようにすることです。

たとえば、データ編集および管理システムは、組織の信頼できるデータの編集と管理に使用されます。 データ編集および管理システムの主要なワークフローには、データ モデルを作成し、属性とジオメトリーを編集し、編集内容を監査する機能があります。 このシステム パターンは、業界固有のコンテキストで実装された場合には、複数の形式を取ることがあります。 次に、これに関する例をいくつか示します。

ArcGIS システム パターンの例

システム パターンを組み合わせて、より複雑な業界固有のシステムを構築することもできます。 たとえば、植生管理システムは、植生を除去、変更、管理して山火事が拡がる可能性を抑えるために、エネルギー公益事業で一般的に使用されているシステムの類型の 1 つです。 植生管理システムには通常、データ編集および管理だけでなく、画像データ管理および解析、モバイル操作、オフライン データ管理も必要です。 また、このシステムは、関係者と連携するために、セルフサービスのマッピング、解析、および共有機能やエンタープライズ アプリケーションと統合または組み合わされることもよくあります。 システム パターンを使用してシステムを設計および構築する方法の詳細をご覧ください。

ArcGIS システム パターンの紹介

現在、次の 8 つの ArcGIS システム パターンがあります。

  1. 位置情報サービス システムは、すぐに使用可能なロケーションベースのサービスを企業全体または一般ユーザーに提供します。 このシステム パターンは、ベースマップ、場所、ジオコーディング、ルート検索、空間解析など、さまざまなロケーションベースの機能をサポートしているため、組織独自の基本的な位置情報データ サービスを企業に提供できます。 位置情報サービス システムは基盤となるシステムであり、多くの場合、企業内の他のシステムに機能を提供します。
  2. セルフサービスのマッピング、解析、および共有システムは、データ、マップ、アプリケーションをセルフサービスで作成、共有、使用するための Web 中心のサービスベースのシステムです。 このシステム パターンを活用すると、個人とチームは、専門技術や GIS の知識が豊富でなくても、地理空間コンテンツを作成、共有、使用できます。 また、このシステム パターンは、セルフサービスの空間解析もサポートしています。 Web 中心ですが、ユーザーは Web アプリケーションだけでなく、モバイル アプリケーションや ArcGIS Pro (デスクトップ アプリケーション) を使用して操作することもできます。 このパターンは多くの場合、ArcGIS を組織に導入する方法となり、企業のエンゲージメント センターとクリエイティブ エンジンの両方の役割を果たします。
  3. エンタープライズ アプリケーションのホスティングおよび管理システムは、企業の関係者や一般の関係者にアプリケーションを提供します。 このシステム パターンから提供されるアプリケーションは、Web アプリケーションまたはモバイル アプリケーションとして提供される傾向があり、通常は、信頼性、パフォーマンス、スケーラビリティーなどの領域に対して厳格な技術要件と SLA があります。
  4. データ編集および管理システムでは、通常は組織内にある、信頼できる構造化データを編集および管理することができます。 従来、このパターンは GIS の専門家とデスクトップ編集に大きく依存していましたが、最新の実装では、サービスベースのアーキテクチャーを通じて Web 編集とモバイル編集が可能になります。
  5. 画像データ管理および解析システムは、画像、LIDAR、標高、多次元、方向付き画像の大規模なコレクションをカタログ化し、2D と 3D のどちらのコンテキストでも任意の縮尺で提供するために使用されます。 このシステム パターンでは、Web サービスを介してアクセスし、視覚化、活用、解析に対応したリアルタイム処理を実行して、データ モデルのカタログ化、検索、読み込みを行ったり、企業のユース ケース向けに画像をレンダリングすることができます。
  6. モバイル操作およびオフライン データ管理システムでは、あらゆるオンラインおよびオフラインのモバイル使用シナリオを実現できます。 これには、ネイティブ アプリケーション、モバイル データベース、および Web ベースのデータ同期技術を使用したフィールド データの収集、編集、操作のユース ケースが含まれます。 このシステム パターンは、モバイル ユーザーがネイティブ デバイス上でデータとマップをオフラインにして、現場で状況認識、ナビゲーション、意思決定支援を行う非編集シナリオにも使用できます (車載ナビゲーションの埋め込みアプリケーションなど)。
  7. ビッグ データ解析システムは、大量の地理データとテーブル データの解析に使用されます。 このシステム パターンでは、分散処理インフラストラクチャーで大規模なデータ解析をまとめて実行するためのエンジンとして Apache Spark が使用されます。 通常、ビッグ データの空間解析と時間解析の結果は、さらなる下流解析のためにデータ ストアに書き込まれるか、視覚化とさらなる地理解析のために他の ArcGIS システムに書き込まれます。
  8. リアルタイム データ ストリーミングおよび解析システムを使用すると、組織はセンサー、アセット、その他の動的データ ソースなどのリアルタイム フィードからデータを取り込み、視覚化して解析することができます。 データは、リアルタイムのマッピングに使用するか、さらなる解析のためにビッグ データとして保存するか、発生したイベントに基づいてアクションやアラートをトリガーするために使用することができます。 このパターンは、ライブ データ フィードや、Internet of Things (IoT) などの迅速に出力するデータ ソースに接続されます。
注意:

ArcGIS で実現できるシステムのタイプは、上記のシステム パターンだけではありません。

システム パターンは、製品モデルにもデプロイメント モデルにも依存しない概念と概要のレベルから始まる 2 つの詳細レベルで示されます。 概要レベルでは、機能、ワークフロー、広範な技術的考慮事項、業界固有のシステム例が示されます。 システム パターンでは、製品モデルまたはデプロイメント モデルに固有の論理レベルのアーキテクチャーも提供されます。 この 2 番目の詳細レベルには、ベースラインの論理アーキテクチャー ダイアグラムと、特定のアーキテクチャーに関する検討事項が含まれます。 詳細については、システム パターンの構造をご参照ください。

ArcGIS Well-Architected Framework で示されるシステム パターンは、教育および情報提供を目的としたリソースです。 これらは、組織のニーズを特定のシステム タイプに適合させた後、システム設計と意思決定のプロセスに関連する特性、技術的検討事項、制約とトレードオフを把握するのに役立ちます。 詳細については、システム パターンの使用をご参照ください。

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